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熱処理とは?様々な種類の熱処理方法を徹底解説!

公開日/更新日:2023.06.14

金属加工において欠かせない“熱処理”。
この熱処理というひと手間を加えることで、金属の性質を向上させられることはご存じかもしれません。

ですが、“熱処理”がどのような方法で行われているか、どのような種類があるのかまでは詳しくわからないのではないでしょうか。
そこで、この記事では熱処理とはそもそも何なのかを解説し、焼き入れ・焼き戻し・焼きなまし・焼きならしといった様々な熱処理の方法を詳しく紹介します。



熱処理とは

熱処理とは、金属の材料を熱したり冷ましたりすることで、性質を変化させる技術のことを指し、主に“金属を硬くする”ことを目的に行われます。
熱処理を行うことで金属内部の組織が変化し、強度や硬度、耐腐食性などを向上させることができるのです。

また、温度や時間、スピードなど、条件を変えることにより出来上がるものの性質が変わります。
そんな熱処理は、焼き入れ・焼き戻し・焼きなまし・焼きならしの4つに分けられます。



焼き入れ

鋼を、炉の中で組織の構造が変化する温度(変態点)よりも高い温度で熱し、一定時間置いたのちに水や油などに入れ、急速に冷却することを焼き入れといいます。
この焼き入れを行うことにより、鋼の硬度を高めることができるのです。

焼き入れを行った鋼の硬度は、炭素の含有量やその他の含まれている化合物の量、冷却時間などによって異なります。
そのため、材質に合った焼き入れ時間などを見極めなければなりません。

ただし、焼き入れすることで硬度を高めることはできますが、このままの状態では脆く、割れやすくなります。
そこで焼き入れの後に行うのが、次の焼き戻しです。



焼き戻し

焼き入れを行った後で、変態点を超えない温度で再加熱し、冷却することを焼き戻しといいます。
先ほども説明したように、焼き入れしただけでは硬度は高くなるものの、脆く割れやすい状態になってしまうため、焼き戻しを行って金属に粘りを持たせて強度を高めるのが一般的です。
このように、基本的に焼き入れと焼き戻しはセットで行います。

また、焼き戻しは「低温焼き戻し」と「高温焼き戻し」の大きく2つの方法に分かれます。

低温焼き戻し

150~200℃の低温で焼き戻しを行うことを低温焼き戻しといいます。
低温焼き戻しを行うことで、焼き入れによる急な性質変化などのストレスを軽減できるため、硬く粘りのある素材へと変化させられるのです。

高温焼き戻し

550~650℃の高温で焼き戻しすることを、高温焼き戻しといいます。
高温焼き戻しを行うことで、低温焼き戻しよりもさらに強く粘りのある素材へと変化させることができるため、高級刃物やシャフトなど、より強度の必要なものを作る際に用いられる手法です。



焼きなまし

切削加工をする際に、加工しやすいように鋼を軟らかくする熱処理のことを焼きなましといいます。
まず素材を炉の中に入れ、変態点よりも高い温度で熱した後、炉の中でそのままゆっくりと冷やします。

焼き入れや焼き戻しと違うのは、「炉の中で冷やす」という点です。
そうすることで急激な組織変化が起こらず、組織が均一になるため、鋼が軟らかく加工しやすくなります。

焼きなましは、完全焼きなまし、拡散焼きなまし、球状焼きなまし、等温変態焼きなまし、応力除去焼きなましなど、目的によっていくつかの種類に分けることができます。



焼きならし

素材の組織を均一にするために行うのが焼きならしです。

通常、鋼は鋳造、鍛造、圧延といった方法で加工されていきます。
ただし、これらの製造の過程では、どうしても鋼の組織にひずみやムラができてしまうのです。
そこで焼きならしを行い、鋼の組織を均一化・微細化し、加工の品質を向上させます。

焼きならしの工程は焼きなましと似ており、まず炉の中で変態点よりも高い温度で熱した後、“空気中”で放冷することで組織の結晶粒を微細化させ、強靭性など性質の向上を図ります。



熱処理後は様々な方法で硬度を計測

硬度の測定方法には、“押し込み硬さ試験法”と“動的硬さ試験法”の2種類があります。
まず、押し込み硬さ試験法は、硬い材料を決められた押し込み具で硬度を測りたいものに押し付け、その部分にできた痕(圧痕)から硬さを求めます。

押し込み硬さ試験法でよく使われるものは以下のとおりです

  • ロックウェル硬さ試験:圧子を用いる試験方。主に焼き入れ・焼き戻し後の測定に使用される
  • ビッカース硬さ試験:ダイヤモンド製の四角錐を用いて微小部品の硬さを測る
  • ブリネル硬さ試験:球形の圧子を用いて鋳物の硬さを測る

次に、動的硬さ試験法では、決められたハンマーなどを硬度を測りたいものに衝突させ、その時の反発の大きさや角度などから硬さを求めます。
動的硬さ試験法の例としては、おもりを落下させ跳ね返った高さで計測する“ショア硬さ試験”などが挙げられます。

おわりに

熱処理の主な目的は「金属を硬くして強度を高めること」です。
ただし、硬くしただけでは割れやすくなるなどの弊害部分も出てくるため、今回紹介した焼き戻しなどを行って、耐久性の向上なども同時に図っていきます。
焼き入れ・焼き戻し・焼きなまし・焼きならし、それぞれの工程とその効果について理解し、今後の業務に活かしていきましょう。