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治具とは?何のために使うもの?
製造業で製品を生産する際、機械の性能や職人の技術だけで品質が決まると思っていませんか?
しかし、実は機械や技術と同じぐらい重要と言っても過言ではないのが、“治具”です。
ただし、一言で治具と言われてもイメージしにくいもので、「いまいちよく分からない」と感じているかもしれません。
そこで、この記事では、そもそも治具とは何なのか、何のために使うものなのかを解説し、代表的な治具の種類を紹介します。
治具とは?
治具とは、製品を作る際に機械や加工物(以下、ワーク)に取り付ける補助具のようなものです。
加工・作業を補助する役割があり、ステンレスやアルミ合金、樹脂など、様々な素材から作られ、用途に合わせて使い分けられます。
治具は製品ごとの形状や仕様に合わせて、オーダーメイドで作られるのが一般的です。
そのため、ロット数が少ない製品や試作品向けに製造する場合は、個数の少ない1つの製品に対して1つの治具を作る必要があり、コストが高くなることがあるので注意しなければなりません。
ちなみに、「治具」という言葉は、英語で同じような意味を持つ「jig」の当て字から由来しているので、この機会に覚えておきましょう。
治具は何のために使う?
治具を使えば、生産が安定するようになります。
そこから生まれるメリットを大きく2つに分けて見ていきましょう。
作業効率の向上
加工する際に機械やワークに治具を取り付けることで、特に量産品の製造の場合、作業効率が飛躍的に向上します。
たとえば、同じ箇所に穴を開けたり、同じ長さで何度も材料を切断しなければならない場合など、治具がないとどこに材料を置けば良いのかが定まらず、毎回セットする場所を調整しなければならなくなってしまうでしょう。
他にも、鉄板を曲げるような場合も治具で固定しておくことで、加工者の勘や技術に依存することなく、材料を設置していけます。
このように、治具を取り付けておけば余計な手間がかからなくなるため、作業効率が向上していくのです。
品質の維持
治具は、製品の品質の維持にも役立ちます。
同じような作業が続いていると、どれだけベテランの職人でも疲れがたまったり、集中力が切れてしまったりするでしょう。
そうなると、知らず知らずの内にワークの位置が微妙にずれてしまうということも起こりえます。
製造業では、1mm未満の水準で検査が実施されることも多く、少しの油断が品質の低下を招き、お客様からの信用にも影響を与えることになってしまうでしょう。
しかし、治具を取り付けることで、同じような加工が連続する場合も、毎回同じ精度の製品を生産できるようになるため、品質が維持できるのです。
なお、治具で安定した生産を実現することは、人的ミスによる品質低下を防ぐだけでなく、作業者の安全面を確保することにもつながるでしょう。
治具の種類
生産を安定させるために重要な治具も、用途や目的に合わせてさまざまな種類に分けられます。
最後に、代表的な治具の種類を紹介します。
固定治具
その名のとおり、加工する際に材料を固定する治具で、穴あけなどの際に使用されます。
バイスやクランプといった治具は代表的な固定治具だと言えるでしょう。
機械加工を行う際に手でワークを押さえていると、ずれる可能性があることはもちろん、作業に危険が伴います。
固定治具を用いることで、安定した状況で加工を進められるようになるのです。
切断治具
鉄板やパイプを切断する際に使用する治具で、ワークを一定のサイズに切断する際に役立ちます。
紙を特定のサイズに切りたいときに、サイズに合わせた目盛りが書いてある裁断機をイメージしていただくとわかりやすいのではないでしょうか。
それと同じように、機械に切断治具を設置することで、誰でも同じサイズにワークを切断することができます。
溶接治具
溶接治具は材料を一定の位置に固定し、製品ごとに溶接する箇所が変わることがないようにするための治具です。
特にロボットなどを使って自動溶接を行う場合は、人の目が離れる分、治具で常に材料が固定されていることは必須条件になってきます。
塗装治具
ワークに塗装を施す場合に使う治具です。わかりやすいものとしては、文字の形で型抜きされたプレートが挙げられるでしょう。
プレートの上からスプレーを吹きかけることで、常に同じ形の文字をワークに塗装することができます。
また、特定の部分にだけ色をつけたい場合に使うものもあり、塗装したい製品によってその形状は様々です。
おわりに
治具は製造業の仕事においては欠かせないものです。
ただし、治具そのものに既製品は少なく、製造する製品に合わせてオーダーメイドで生産されるものが大半です。
そのため、自社の製品を製造するためにどのような治具を用いれば良いのかは、プロにアドバイスをもらうことをおすすめします。
作業効率の向上や大量生産時の品質維持を実現するためにも、自社製品に合った治具製作を依頼しましょう。